愛を教えて ―番外編―
遠い将来、社会的に対立したとき、相手との懐かしい思い出があれば情が芽生えて判断を誤る。卓巳はそんなことを案じているのかもしれないが。
しかし、それでは“美馬”に限定する意味がわからない。
(今日の友は明日の敵というし……逆もあるのだから、気にしていたらきりがないわ)
万里子は納得できない顔つきで卓巳を見ていると、彼も気づいたのか渋々口を開いた。
「君と結婚した頃……大学生だった太一郎の放蕩ぶりを覚えているか?」
「え? ええ、まあ」
卓巳は唐突に、彼の従弟の名前を口にした。
「太一郎は計算するヤツじゃないから、ただ無軌道に暴れていたが……。私の知っている美馬は、あの太一郎の傍若無人な振る舞いを、計算してやっていたようなヤツだ。当時の美馬は相当な力があったからな」
「でも、それは大学時代のお話でしょう? もう十年以上前のことじゃありませんか」
「今は違うと、どうして君に言えるんだ?」
万里子の反論を卓巳はひと言で切り捨てた。
よほど根深いものがあるらしく、卓巳も一筋縄ではいきそうもない。
万里子は一旦口を閉じ、矛先を変えてみることにした。
「そのことがきっかけで、大樹が美馬さんの息子さんに怪我をさせたんです。もちろん、わざとじゃありませんけれど……」
しかし、それでは“美馬”に限定する意味がわからない。
(今日の友は明日の敵というし……逆もあるのだから、気にしていたらきりがないわ)
万里子は納得できない顔つきで卓巳を見ていると、彼も気づいたのか渋々口を開いた。
「君と結婚した頃……大学生だった太一郎の放蕩ぶりを覚えているか?」
「え? ええ、まあ」
卓巳は唐突に、彼の従弟の名前を口にした。
「太一郎は計算するヤツじゃないから、ただ無軌道に暴れていたが……。私の知っている美馬は、あの太一郎の傍若無人な振る舞いを、計算してやっていたようなヤツだ。当時の美馬は相当な力があったからな」
「でも、それは大学時代のお話でしょう? もう十年以上前のことじゃありませんか」
「今は違うと、どうして君に言えるんだ?」
万里子の反論を卓巳はひと言で切り捨てた。
よほど根深いものがあるらしく、卓巳も一筋縄ではいきそうもない。
万里子は一旦口を閉じ、矛先を変えてみることにした。
「そのことがきっかけで、大樹が美馬さんの息子さんに怪我をさせたんです。もちろん、わざとじゃありませんけれど……」