愛を教えて ―番外編―
「何が弁護士ですか。どこの世界に子供のケンカで訴訟を起こす親がいるんです!? 馬鹿なことおっしゃらないで!」


万里子の剣幕に卓巳もビックリしたようで、目を丸くしている。

それに、落ち着いて考えると、自分の言い過ぎにも気づいたらしい。コホンと咳払いを一つして、宥めるように万里子の肩を抱き寄せた。


「まあ、その……弁護士は言いすぎた。その、君を責めるようなことを言ったのも……私が悪かった。ただ、君が行かなくても、代わりの者をやればよかったんじゃないか、と思っただけなんだ」


口を閉じた万里子が怖くなったのか、せっせとご機嫌を取り始める。

大樹にも悪気はなかったんだし、それに、万里子の論法なら何も“美馬”の息子と友だちにならなくてもいいわけだし……。大樹自身は大勢の友だちと仲良くやっているのだから、問題は美馬の息子にある。それは、向こうが解決すべき問題ではないか、と。


「君が誰にでも優しくて、お節介……あ、いや、面倒見がよいのはいいことだと思うよ。だが、ほら、何ごともほどほどに、と君が私によく言ってるじゃないか。とくに美馬と仲良くしようとしなくても、普通にやれば……」


卓巳からその言葉を聞いた瞬間、万里子はニコッと笑った。


「ええ、そうですね。わたしもそう思います。これまでは卓巳さんが美馬さんの名前を聞いただけで嫌な顔をされるので、なるべく親しくしませんでしたけど……。これからは普通に接したいと思うの。よかった、卓巳さんがわかってくださって」


呆然とする卓巳に、万里子は愛実と話し合ったことを告げる。

それは……


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