愛を教えて ―番外編―
彼の胸の中は愛実にとって唯一の安全地帯だ。そのまま、何もかも忘れるようにして体を預ける。

すると、


「……シャワーから出るまで待てそうにない。今日は……このまま構わないか?」


普段はこの上なく優しいパパになった藤臣だが、男に戻ったときは昔のままだ。愛実を困らせるほど求めてくる。

今このときも、彼の手はすでにネグリジェの裾をたくし上げていて……。

愛実は心の内で苦笑しつつ、


「今日はこのままでも平気だけど……お疲れじゃないの?」

「疲れてる。君を抱かないとエネルギーが切れそうだ」

「私はパパのエネルギー源なだけ?」

「君の前では“パパ”じゃないぞ、愛実」

「じゃあ……藤くん。私にも元気をちょうだい」


愛実は自分から藤臣の首に手を回し、キスをねだった。


(明日の朝、なんでもないフリをしてエコ・カーニバルの話をしよう。藤原さんのことは言わずに。ただ、行事に出て欲しいとだけ……)


藤臣の指先と吐息を肌に感じながら、愛する人の熱を体の中に受け入れつつ――そんなことを考える愛実であった。


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