愛を教えて ―番外編―
(嘘は言ってないけれど……でも、どうすればいいの?)


愛実は張り切って計画を進める万里子をみつめ、コソッとため息をついた。


もちろん、藤臣に話はしたが……。


愛実が実行委員を務める幼稚園の行事“エコ・カーニバル”が七月の第一土曜日に行われる、と。できれば、藤臣にも父兄として協力して欲しい。そうお願いした。


『今からだと難しいな。君だけだと不味いのか?』


愛実は返事に困りつつ、男手が必要だから、と理由をつける。


『そうか……出席できるように努力するが。無理なら代わりに尚樹を行かせよう。ヤツには休みを取らせるから。男手なら、私より若い尚樹のほうが役に立つだろう』


尚樹とは愛実の弟の名だった。

今年の春に大学を卒業し、将来は藤臣を補佐するべく秘書見習いとしてついて回っている。現状では、瀬崎の補佐というべきかもしれない。

愛実はそれ以上押すことができず、『無理を言ってごめんなさい』と引いたのだった。


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