愛を教えて ―番外編―
あの様子だと、たぶん藤臣は来られないだろう。

尚樹が来て手伝ってくれたら、イベントそのものには迷惑を掛けずに済むが……。せっかく、万里子がお膳立てしてくれた計画は台無しになってしまう。


あの日以来、万里子は何かと理由をつけて愛実を誘ってくれる。

近所のママ友たちは、多くが藤原邸に招かれているという。スペースもさることながら、専門の保育士もいるので母親たちが安心して話に熱中していられるのだ。

幼稚園より少人数で、万里子と仲の良い人たちばかり……。まずは彼女たちと愛実が打ち解けたら、そう気づかってくれているのがよくわかった。


(それなのに……断ってばかりで)


家政婦の手前、こういったPTAの集まりでもない限りそうそう家を空けることはできない。家政婦は愛実の言動を親戚に知らせている様子があった。

それもまた、愛実にとって負担のひとつで……。


(でもママ友なんて、私がダメな母親だって思い知らされるだけだわ……きっと)


これまでの経験で愛実は自信を失っていた。

そんな彼女にとって、真ん中で輝く万里子は自信に満ち溢れ、眩しすぎたのである。


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