愛を教えて ―番外編―
『藤原さんとは、特別に仲が悪い……とか?』

『というか、どうも嫌われているらしい。まあ、卑怯な手で潰しにくるようなヤツじゃないが』

『あの……大地は藤原さんの結人くんや美月ちゃんと仲が良いんですけど』


愛実がおずおずと口にすると、藤臣は軽く笑い飛ばした。


『子どもは子どもだ。気の合う相手と仲良くすればいい。親が何者か、なんて関係ないさ。それとも、君が気になるのか?』

『い、いえ、まさか。結人くんのママは……あ、藤原さんの奥様ですけど、私にも気軽に声をかけてくださって、仲良くしていただいてるんです。明日のエコ・カーニバルでも一緒に実行委員をしているので』


なかなか言えなかった“藤原”の言葉がすっと言えて愛実はホッと息を吐く。

思い切って、明日のエコ・カーニバルで卓巳と一緒に焼きそばを焼いて欲しい。

そう伝えようとしたとき、


『藤原とは大学が一緒だった。当時のヤツは苦学生でね。私は父から、ヤツが藤原の御曹司だってことを聞いて……。羨ましくて、コトあるごとに突っかかってた気がする。立場だけじゃなく……どうあがいても、成績では足もとにも及ばなくて。それも悔しかったな』


浅からぬ卓巳との因縁を聞き、愛実はそれ以上言えなくなる。

ましてや、今日の午後から準備があるなど、口にすることができない愛実だった。


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