愛を教えて ―番外編―
なのに、愛実の実家“西園寺家”は身分だけは高い。旧華族で彼女の肩書きは、旧伯爵家令嬢という大げさなものだ。なんの実を伴わない身分でも妬む人間はいて、愛実が悩まされる原因のひとつになっている。
万里子を羨む気持ちはないし、子供たちの世話が嫌だと思ったことなど一度もない。
でも……。
「愛実さん。お疲れさま! 北斗くん頑張ってたわよ。パパの代わりだから長机も自分で運ぶんだって言って」
「まあ。すみません、準備の邪魔をしたんじゃないかしら」
愛実は野菜を切ったまな板を洗っていた手を止め、エプロンで濡れた手を拭った。
「とんでもない! うちの大樹も負けまいと頑張っちゃって、ふたりで運んでたわ。あれで仲良くなってくれたらいいんだけど」
万里子の笑顔に愛実は安堵の笑みをこぼす。
「そうですね。あ、忍はいい子にしてるでしょうか? 藤原のメイドさんにお任せしてしまって」
万里子にも、まもなく一歳の四男と来年の春から幼稚園の三男がいる。
一日仕事になるPTA行事では、万里子は決まって専属のメイドを伴い、小さな子どもたちも連れて来ていた。
そういったときは必ず、ついでだから、と言い、空いた教室で同行している乳幼児の世話も引き受けてくれるのだ。
万里子を羨む気持ちはないし、子供たちの世話が嫌だと思ったことなど一度もない。
でも……。
「愛実さん。お疲れさま! 北斗くん頑張ってたわよ。パパの代わりだから長机も自分で運ぶんだって言って」
「まあ。すみません、準備の邪魔をしたんじゃないかしら」
愛実は野菜を切ったまな板を洗っていた手を止め、エプロンで濡れた手を拭った。
「とんでもない! うちの大樹も負けまいと頑張っちゃって、ふたりで運んでたわ。あれで仲良くなってくれたらいいんだけど」
万里子の笑顔に愛実は安堵の笑みをこぼす。
「そうですね。あ、忍はいい子にしてるでしょうか? 藤原のメイドさんにお任せしてしまって」
万里子にも、まもなく一歳の四男と来年の春から幼稚園の三男がいる。
一日仕事になるPTA行事では、万里子は決まって専属のメイドを伴い、小さな子どもたちも連れて来ていた。
そういったときは必ず、ついでだから、と言い、空いた教室で同行している乳幼児の世話も引き受けてくれるのだ。