愛を教えて ―番外編―
わずかに相好を崩し、藤臣は親しげな笑みを作る。
そして、先代社長逮捕の件で愛実と子どもたちがいじめに遭ったことを話してくれた。
万里子も思い切って、今日の出来事を藤臣に伝える。
彼は万里子が話し終わるまで黙って聞いてくれた。その様子はとても家族を大切に思っていない男性の姿には見えない。
「余計なことをしているのはわかっています。仕事を放り出して幼稚園の行事に出てくれなんて、非常識な話だと思います。でも、ほんのわずかな時間でも、美馬さんが行事に顔を出されるだけで、愛実さんの立場は変わると思うんです。お子さんのお父様に対する信頼にも応えられるんじゃないかと……」
「よくわかりました」
藤臣はひと言答えると伝票を手に席を立った。
「申し訳ありませんが、もう時間がないようだ……」
視線の先を見ると、秘書らしき男性がロビーラウンジの入り口でこちらを見ていた。彼が香織の夫、瀬崎であろうと察し、万里子は軽く会釈した。向こうも丁寧に頭を下げる。
万里子もバッグを手に取り、藤臣の後をついて行く。
「わたしもすぐに失礼いたします。でも、話を聞いていただけて良かった」
「どうしてですか?」
そして、先代社長逮捕の件で愛実と子どもたちがいじめに遭ったことを話してくれた。
万里子も思い切って、今日の出来事を藤臣に伝える。
彼は万里子が話し終わるまで黙って聞いてくれた。その様子はとても家族を大切に思っていない男性の姿には見えない。
「余計なことをしているのはわかっています。仕事を放り出して幼稚園の行事に出てくれなんて、非常識な話だと思います。でも、ほんのわずかな時間でも、美馬さんが行事に顔を出されるだけで、愛実さんの立場は変わると思うんです。お子さんのお父様に対する信頼にも応えられるんじゃないかと……」
「よくわかりました」
藤臣はひと言答えると伝票を手に席を立った。
「申し訳ありませんが、もう時間がないようだ……」
視線の先を見ると、秘書らしき男性がロビーラウンジの入り口でこちらを見ていた。彼が香織の夫、瀬崎であろうと察し、万里子は軽く会釈した。向こうも丁寧に頭を下げる。
万里子もバッグを手に取り、藤臣の後をついて行く。
「わたしもすぐに失礼いたします。でも、話を聞いていただけて良かった」
「どうしてですか?」