愛を教えて ―番外編―
真っ青になる卓巳をよそに、


「冗談です。ご主人がいらしたなら、安心ですね。どうもありがとうございました。それでは、失礼いたします」


藤臣は万里子と卓巳に会釈をして背を向ける。


何も答えずに顔を背けた卓巳とは逆に、


「いえ、こちらこそ。大事なお仕事の邪魔をしてしまい、申し訳ありませんでした」


万里子はわざわざ藤臣の後を追い、謝罪を口にしたのだ。


「万里子! もういい。来なさい」


まさか、一流ホテルのロビーで彼女の手をつかみ、引きずるような真似はできない。

そんな卓巳の言葉を万里子は聞き流し……「明日、お会いできるのを楽しみにしています」そう付け加えた。


軽く手を上げた藤臣を、ジッと見送る万里子の姿に、卓巳は信じられないほどの憤りを感じていた。


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