愛を教えて ―番外編―
「宗、上に部屋を取れ。――万里子、言い訳なら後で聞こう。君はそこで待って……おいっ! 万里子っ!」


目の前を素通りしていく妻の後を、卓巳は慌てて追いかける。


「どこに行く気だ!」

「家に帰るんです。もうすぐ八時ですもの。帰ったら、子供たちを寝かさないと」


ホテルで男と会っていたところを夫に見つかったのだ。

それなのに、万里子は何もなかったかのように子供たちのことを口にする。


「子供たちにはメイドがいる。今はそれどころじゃないだろう!?」

「何がですか?」

「美馬とホテルにいながら、釈明もなしか!?」


肩で息をしながら、卓巳はできる限り音量を落として怒鳴った。

それでも、周囲の数人は不審そうにこちらを見ている。


「ロビーラウンジのスペースから出てきたことはおわかりでしょう? 事情なら、明日のことだとお話しました」


興奮する卓巳とは逆に、万里子は妙に冷めた瞳で夫を見上げた。

そして口にしたのは……。


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