愛を教えて ―番外編―
「卓巳さん、いつまでも二十歳そこそこの、学生のような態度は取らないでください。美馬さんはちゃんと態度を分けていらっしゃるじゃありませんか。あまり、恥ずかしいことはなさらないで……。――まさかとは思いますけど。公私混同なんてなさいませんよね?」


万里子の言葉に、卓巳の中のストッパーが外れた。


「君は何か勘違いをしてるんじゃないのか? 何をしても、私は君の言いなりだ、と」

「お話なら、帰ってから伺います」

「忘れるな。藤原邸に君の帰る場所があるのは、私の妻でいられるからだ、ということを」


その傲岸不遜なセリフは万里子の足を止めることに成功したが、同時に、かつてないほど彼女を怒らせることになり……。


「それは、わたしに妻でいて欲しくないということですか?」

「そんなことは言ってない」

「わかりました。明日のPTA行事が終わりしだい、実家に帰らせていただきます」


そこで、そんな必要はない、と言えばよかったのだ。

だが、このときの卓巳は、藤臣と比べられたことにどうしようもない腹立ちを覚えていた。


「帰りたければ帰ればいい。だが、子供たちは置いていけ!」


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