愛を教えて ―番外編―

(12)台風上陸中

エコ・カーニバル当日――。

天気は快晴。園児ならびに関係者の、日頃の行いが良かったに違いない。


但し、藤原邸の上にだけ前夜から積乱雲がとどまり、一向に消え去る気配はなかったが……。


大広間とも呼ばれる食堂の中央に、テーブルがセットされていた。

白いテーブルクロスの上に焼きたてのパンが置かれ、それぞれの前にスープやスクランブルエッグ、サラダが並べられる。ドリンクはフレッシュジュースやミルクなど、希望に応じて様々だ。


「お母さん、僕と美月ちゃんは孝司おじさんと一緒に行くからね」


長男の結人がテーブルを挟み万里子に笑顔で言った。

すると、結人の左隣に座った大樹が不満の声を上げる。


「僕も! お兄ちゃんと美月ちゃんと一緒がいい!」

「大樹は、光希たちと一緒に来たほうがいいよ……」

「いやだよ! メイドと一緒だと、赤ちゃんみたいじゃないかっ!」


大樹はなんでも兄と同じにしたがる。そして、弟たちと同じに扱うと怒るのだ。

鷹揚な長男、大胆な次男に比べ、三男はとても繊細な性質だった。光希はチョウチョにも怖がり、遊園地で着ぐるみが近づくだけで大泣きする。体験入園のときも、園庭や遊戯室で走り回るより、図書室でずっと絵本を読んでいた。

それが、大樹には合わないらしい。


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