愛を教えて ―番外編―
卓巳が席に着くと、入れ替わるように万里子は立ち上がった。


「じゃあ、お母さんは先に行くわね。今日は忙しいから、後のことは千代子さんにお願いしてるから大丈夫よね?」


万里子の言葉に子供たちもメイドも「はい」と答える。


「幼稚園のこともそうだし……他にも色々、しなければならないことがたくさんあるの」


そう言うと、万里子はチラッと卓巳を見て、食堂から出て行ってしまう。


卓巳は背筋に冷たい汗が伝った。



昨夜、卓巳が帰宅したのは深夜一時を回っていた。

仕事はもっと早く終わったのだが、一旦、本社の社長室に戻ったため、遅くなったのである。

そして、万里子になんと言って謝罪すべきか考えていた。   


(子供を連れて行くなと言っただけで……別れるとか、出て行けとか、言ったわけじゃないんだ。そうだ、そんなつもりじゃなかった、と言って押し切ろう!)


実に情けない結論を出して、卓巳は帰宅するが……。

彼を玄関に出迎えたのは二代目執事の浮島だった。


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