愛を教えて ―番外編―
三十を少し過ぎた彼は父親によく似ており、仕事熱心な男だった。感情が全く顔に出ず、子供たちは「浮島はロボットなんだよ」と真剣な顔で言っていたくらいだ。
『お帰りなさいませ、旦那様』
『万里子はどうした?』
『お部屋でございます。出迎えは任せるとおっしゃられて、お休みになられました』
結婚以来、万里子が卓巳を出迎えないのは、具合の悪いときだけだった。
卓巳はふいに心配になり、
『どこか、体の調子でも悪いのか?』
『いえ、そのようなことは聞いておりませんが……。旦那様、お着替えの手伝いはいかがいたしますか? わたくしでよろしければ』
『いや、いい。お前ももう寝なさい』
男に着替えを手伝ってもらうほど、卓巳は何もできないタイプではない。もともと、メイドにすら任せたことはなかった。万里子だから……色々世話を任せてきたのだ。
卓巳を私室の前まで送ると、浮島は『おやすみなさいませ』と下がって行った。
リビングには明かりが灯っていた。
卓巳はラフな服装に着替え、子供たち全員の寝顔を見てから、シャワーを浴びた。そして、夫婦の寝室に洗面所のドアからこっそりと入り込む。
『お帰りなさいませ、旦那様』
『万里子はどうした?』
『お部屋でございます。出迎えは任せるとおっしゃられて、お休みになられました』
結婚以来、万里子が卓巳を出迎えないのは、具合の悪いときだけだった。
卓巳はふいに心配になり、
『どこか、体の調子でも悪いのか?』
『いえ、そのようなことは聞いておりませんが……。旦那様、お着替えの手伝いはいかがいたしますか? わたくしでよろしければ』
『いや、いい。お前ももう寝なさい』
男に着替えを手伝ってもらうほど、卓巳は何もできないタイプではない。もともと、メイドにすら任せたことはなかった。万里子だから……色々世話を任せてきたのだ。
卓巳を私室の前まで送ると、浮島は『おやすみなさいませ』と下がって行った。
リビングには明かりが灯っていた。
卓巳はラフな服装に着替え、子供たち全員の寝顔を見てから、シャワーを浴びた。そして、夫婦の寝室に洗面所のドアからこっそりと入り込む。