愛を教えて ―番外編―
『嘘ばっかり!』

『ど、どうしたんだ?』

『仕事だなんて……。宗さんから電話がありました。あなたが気にしていらっしゃったから、出て行かずに話し合ってください、って。会議は九時前には終わったそうじゃない!? すぐに戻られると思いますって。なのに……』


卓巳は舌打ちする。

だが、宗を責められない。怖くて戻れなかった、家に電話をして万里子の帰宅を確認する勇気もなかった、など、わかれと言うほうが無理だ。


『だから、なんだ? 私の仕事は……宗が知らないこともある。別に、浮気してきたわけじゃあるまいし……』

『浮気がしたいなら、してきたらいいじゃありませんか? 他の女性を妻にしたいなら、そうすればいいんだわ! あなたの望みどおり、娘を産んでくれる女性を……』


なんでここに娘の話が出るのか、卓巳にはさっぱりわからない。

だが、腕を振りほどかれ、『愛してる』の言葉を拒絶されて、卓巳の怒りも再燃した。


『わかった。美馬に倣って、もっと若い女性を探すとしよう』


卓巳の暴言に、万里子は背中を向けた。

彼はそのまま寝室と続きの間のリビングも出て、書斎に飛び込み、朝まで過ごしたのである。


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