愛を教えて ―番外編―
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子どもが何人いてもメイドの手が借りられる万里子と違い、雪音の場合はすべてひとりで面倒を見なくてはならない。 

小さな子どものいる家庭、それも『家族でお出かけしよう』なんていうときは戦場だ。


「ママぁ、和ちゃんがピンクのゴムとったの。藤ちゃんのなのにぃ」

「ちがうもん! かしてって言ったもん。今日は和ちゃんがピンクなのっ」

「藤ちゃん、青きらいっ!」


髪をくくるゴムの色をめぐって、双子の娘は奪い合いを始める。

朝から怒りたくはない。怒っても、子どもはいうこと聞かないし……とわかってても、叫びたくなるのがママの心情だ。


「ふたりとも、青とピンクの一本ずつでくくりなさいっ! イヤならお留守番よっ!」


姉の和音はふくれながらも無言で髪をくくり始め、妹の藤音はしばらくグスグス泣いていた。それでも放っておくと、和音のほうが妹の髪をとかして、くくってやっている。

十分もすると、ふたりは顔を合わせてキャアキャアと笑い始めるのだから……。
 

(ホント、子どもってわからない……)


末っ子でひとり息子、幸仁の準備をしながら思う雪音だった。


「絢ちゃんの着替え終わったぞ」


そう言って三女の絢音を抱き、子ども部屋から出てきたのは夫、宗行臣だった。


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