愛を教えて ―番外編―
「ありがとう。今日は赤なんだ、絢はいいね~お洋服いっぱいあって」

「ふたり分のお下がりだもんな」

「大丈夫、大丈夫、絢にはまだわかんないから」


夫婦は顔を合わせて笑う。

女の子だからわかるようになったら文句を言うかもしれない。


(まあ、そのときはパパのお小遣いを減らせばいいし……)


雪音はにっこり笑いつつ、宗に尋ねた。


「それで、卓巳様ってマジでそんなこと言っちゃったの?」

「真っ青になりながら言わなくてもいいのにな……。まったく、困った人だよ」


昨夜の顛末を宗から聞いたのは今朝のこと。


「万里子様、怒ってたでしょ」

「そりゃもう……睨まれたときは石になるかと思ったさ」

「今日、大丈夫なの? まさか、夫婦喧嘩で行事欠席なんてしないと思うけど……。卓巳様って意外と子どもっぽいし」


雪音は万里子が嫁いでくる前から藤原邸で働いていた。ある意味、万里子より卓巳との付き合いは長い。万里子と結婚前の卓巳は、自宅では無彩色に近かった。いるのかいないのかわからず、感情のない人なのだ、と思ったこともある。


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