愛を教えて ―番外編―
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「お似合いですよ、社長」
 

宗の言葉に卓巳はムッとした顔を浮かべる。

何の嫌がらせか、万里子が卓巳に手渡したエプロンには、ピーターラビットが描かれていた。通りすがりの園児の母親や先生たちが、卓巳の姿を見るたびに笑っている。
 

「手伝いましょうか、という気にはならないのか?」

「無理言わないでください。ご覧のとおり、両手に花なんですから」


長男は妻の雪音がベビーカーで連れて行ったらしい。

宗の左右に双子の娘が立ち、二歳の三女を抱っこしている。確かに、これで手伝えというのは酷というものか。


「もう少ししましたら、体育館でオープニングセレモニーが始まりますので……。それが終わったら、体育館は遊びコーナーになりますから、お子さんたちも好きに遊んでくれると思いますよ」


大変そうな宗を見かねたのか、愛実が声をかけた。

万里子より小柄で繊細そうな女性だ。いや、万里子が図太いとは言わないが、一旦決めたらテコでも譲らないという頑固さはある。


(心配じゃないのか? 手伝いにきてもいいじゃないか。あんな売り言葉に買い言葉を、真に受けなくったって……)


鉄板を温め、油を引いて馴染ませ、それを何度か繰り返した後、卓巳は豚肉から焼き始める。

野菜がキャベツしかない、というのに問題を感じるが、まあ、幼稚園のイベントなら、こんなものなのだろう。


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