愛を教えて ―番外編―
卓巳の言葉に、愛実と香織は顔を見合わせ、クスクスと笑っている。
 

「社長……それはあんまりですよ」

「いやいや、私も秘書を取り替えたい気分だな」


卓巳の嫌味に気づいたのか、宗も嫌味で切り返してきた。


「それはそれは、“奥様ごと”ですか?」

「言うじゃないか、宗。お前もそのつもりじゃあるまいな」


嫌味の応酬を聞いても、愛実には何のことかわからないようだ。きょとんとした顔をしている。

一方、香織はピンときたのか……。


「イヤですわ。おふたりとも、たくさんのお子さんに囲まれて、とってもお幸せそうですのに」

「ええ、もちろんですよ。社長もそうですよね」


きっぱりと言い切る宗の様子に妙なものを感じつつ……。


「ああ、四人の息子に囲まれ、この上なく幸福だ。妻から、焼きそばを焼けと命令されても逆らえないくらいにな」


「それは申し訳ありませんでした。お願いしたつもりでしたのに、命令だなんて」


振り向いた卓巳の目に映ったのは、頬を引き攣らせて立つ万里子だった。 
 

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