愛を教えて ―番外編―
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幼稚園の正門前に四人組の家族連れが佇んでいた。
 

「三月まで通ってたのに、随分昔のような気がするわ」

「結局、十年くらい通ってたことになるのか?」

「悠と桜の間が一年空いたけど……十年のうち九年も通ったのよ」


一条夏海はゆったりとしたオリーブグリーンのワンピースを着て、隣に立つ夫の聡を見上げ微笑んだ。



一条夫妻は結婚して十一年になる。

聡は結婚の誓いを一度も破ることなく、夏海のことを下にも置かないように大切にしてくれた。三人の子供にも恵まれ……いや、秋が終わる頃には四人目が誕生する予定だ。

聡は今年で四十九歳になった。子供が成人するころにはもう七十近い高齢になってしまう。

四人目を作ることに夏海自身、躊躇しないではなかったが……。


『ひとりくらい、夏海に似た子供が欲しかったな』


聡の言葉に夏海は考えたのだ。

彼女は今年三十七歳、年齢的にも人数的にも、そろそろリミットだろう。チャレンジするか、諦めるか、悩んでいるときだった。背中を押されるように四人目がお腹に宿り……。


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