愛を教えて ―番外編―
聡が所長をしている弁護士事務所でも、それぞれの実家でも、ふたりの年齢を考え散々冷やかされた。


『あなたにそっくりだったらどうする?』

『君と子供が元気なら文句は言わない。それに、子供の成長ってのは何度経験してもいいもんだ。つくづく、悠の成長を見逃したことが悔やまれるよ』


長男の悠は十三歳の中学二年生。

悠が二歳のときに夏海は聡と結婚した。そして聡は周囲に二度の離婚歴がある、と思われていた。そのため、聡にとって悠は実子なのに、妻の連れ子と誤解されることも多い。

しかも、その誤解を訂正すると……。

悠が生まれた時期に、聡は別の女性と結婚式を挙げ、未入籍のまま別れている。対外的にはこれも離婚と思われているので、夏海との不倫が原因だ、と別の誤解をされてしまう。

親しい相手であれば、色々誤解が重なっただけで決して不倫の関係ではない、と説明もできる。

だが、それ以外の相手から『不倫相手に子供ができたから、妻を捨てて再婚した』そんな噂を耳にするたび、夏海より聡のほうが苦しそうだ。

とくに、夏海が悠を妊娠したとき、誤解から中絶を迫ったこと。そして再会後も、なかなか実子と認めなかったこと。

聡は悠の顔を見るたび、昔を思い出して深い後悔に苛まれるようだ。

しかもこの春、悠は何を勘違いしたのか夏海に『本当のお父さんを教えて』と言い始めた。誤解はすぐにとけたものの、その後の聡の落ち込みようは酷かった。


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