愛を教えて ―番外編―
だが、本当に余計なことだったのだろうか。藤臣は何も知らないまま、愛実や子供たちが傷つくことを望んでいるだろうか?
もし自分なら……。万里子がそう考えたとき、卓巳が口を開いた。
「それは違う」
「え?」
きっぱり言い切る卓巳に、万里子と愛実は疑問の声を上げた。
「妻や子供のためにやることは“無理”とは言わない。むしろ、言われないほうが寂しいというものだ」
「でも……藤原さんのようにたくさんの部下もいませんし、大きな会社でもないので。今は、色々大変なときだと言いますし……」
卓巳は軽く首を振り、
「できるか、できないか、じゃない。やるか、やらないか、だ。もちろん、頑張ってもダメなときはある。どうしても時間の都合がつかないときも。でも最初から“無理だろう”と思われるのは心外だ」
「……それは……」
愛実は言葉に詰まった。
卓巳の言い方はまるで、藤臣が来られないのは彼のせいではなく、彼を気遣った愛実のせい、と言っているようなものだ。
愛実の大きな瞳が瞬く間に、決壊寸前のダムのようになる。
もし自分なら……。万里子がそう考えたとき、卓巳が口を開いた。
「それは違う」
「え?」
きっぱり言い切る卓巳に、万里子と愛実は疑問の声を上げた。
「妻や子供のためにやることは“無理”とは言わない。むしろ、言われないほうが寂しいというものだ」
「でも……藤原さんのようにたくさんの部下もいませんし、大きな会社でもないので。今は、色々大変なときだと言いますし……」
卓巳は軽く首を振り、
「できるか、できないか、じゃない。やるか、やらないか、だ。もちろん、頑張ってもダメなときはある。どうしても時間の都合がつかないときも。でも最初から“無理だろう”と思われるのは心外だ」
「……それは……」
愛実は言葉に詰まった。
卓巳の言い方はまるで、藤臣が来られないのは彼のせいではなく、彼を気遣った愛実のせい、と言っているようなものだ。
愛実の大きな瞳が瞬く間に、決壊寸前のダムのようになる。