愛を教えて ―番外編―

(17)藤臣の苦悩

なんとなく、愛実の様子がおかしいことには気づいていた。

子供たちとも滅多に顔を合わせることができなくなり、不在がちの父親をどう思っているのか、気にもなっていたのだ。そんなとき、藤原万里子から連絡があった。

真相を聞き、どうするべきか悩んだ。

愛実が母親として頑張っているなら、横から手を出すことで、彼女の自信を損なうことになるのではないか、と。


藤臣に迷惑をかけている、と愛実が思う分だけ、彼の中では申し訳なさが積もっていく。

どうしようもない思いに突き動かされた結果とはいえ、十代の愛実にとんでもない条件でセックスを強要したのだ。

さらには自分の不注意……というより、我がままで妊娠させた。

他に女性を束縛する手段を知らず、優しい言葉や愛情を示すことも知らなかった。

結婚して、ごく普通の家庭を築き、幸福にすることで誠意を示していこうと思ったものの……。


実の父である美馬一志の逮捕、病死ですべてが変わってしまう。こんなことなら、自分と一緒にならなかったほうが、愛実は幸福だったのではないか?

そんな思いに藤臣は苛まれていた。


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