愛を教えて ―番外編―
「答えろ、どうして愛実が……」

「私ではなく、嫁さんに聞け。第一、顔色を変えるぐらいなら、もっと早く来い」


あっさり返され藤臣はそれ以上尋ねる言葉を失う。

そのとき、愛実の指が彼の腕に触れた。


「来て……くれたの? 嬉しい……」


初めて会った頃となんら変わりない。愛実の存在すべてが彼にとってどうしようもなく扇情的だった。今この場できつく抱きしめてしまいたいほど。

だが、まさか人前で妻を抱き寄せ、「当たり前じゃないか」と言えるくらい藤臣は解放的な性格ではなかった。
 

「できる限り来ると言っただろう? 私を信用してなかったのか?」

「いえ……ごめんなさい」


うつむく愛実の顔を見ていると、罪悪感でいっぱいだ。彼女の頬に手を添え、上を向かせて言いたくなる。謝らなくていい、信じていたと言ってくれたらそれだけで……と。



そのとき、藤臣の前にヌッとコテが突き出された。


「嫁さんに見惚れるのはそれくらいにしろ。焼きそばは焼けるんだろうな? できないなら、横でパック詰めとレジでもやっていてくれ」


およそ不似合いなピーターラビットのエプロンをつけながら、卓巳はえらそうに言う。


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