愛を教えて ―番外編―
大学時代の藤臣は、一応成績優秀な部類にいた。

だが、間違っても真面目な生徒ではない。将来結婚したところで、子供のために何かするなど論外。プライベートは好き勝手に遊び歩く姿が容易に想像できるタイプの男だったと思う。


その一方で、真逆ではあったが卓巳とて大差ない。近寄る人間を片っ端から威嚇していたような男だ。

しかも、その性別が女であれば更にひどい。ばい菌でも見るような目つきで視界から排除していた。冗談のひとつも言わず、愛想笑いもせず……百年経っても卓巳の周囲に女はひとりもいないだろう、と誰もが噂していた。


「あの藤原が、まさか四人の子持ちになるとは……お前って子供の作り方知ってたんだな」


言われっぱなしが悔しくて少し言い返したつもりだったが、卓巳は目に見えてムッとする。
 

「やかましい、黙って焼け!」

「結婚の話を聞いたときは、てっきり財産目当ての偽装結婚だと思ってたよ。彼女は、実は魔法使いとか?」

「違う。万里子は、私の人生に存在するたったひとりの女性だ。文句があるか?」

「――いや」


からかうつもりが本気で答えられ、藤臣は何も言えなくなった。


(そういえば、この手の冗談が通じないオトコだったな)


< 236 / 283 >

この作品をシェア

pagetop