愛を教えて ―番外編―
ここ数年の卓巳は、宗とであればだいぶ砕けた会話もできるようになった。だが、万里子の話になると別だ。下手な冗談は本気で卓巳を怒らせかねない。


藤臣は前夜のことを思い出し、苦笑して矛先を納めた。

そのとき――。


「パパ! ほら、北斗。お兄ちゃんの言ったとおりだろう? パパはちゃんと来てくれるんだ!」


明るい声を上げながら大地が北斗の手を引き駆け寄ってくる。

だが、嬉しそうな大地とは逆に、北斗は難しそうな顔をしたままだ。


「大地、北斗、遅くなって悪かった。ママの言うことをちゃんと聞いていい子でいたか?」

「もちろんだよ。北斗も頑張ったんだ。な、そうだろ?」


大地は父親がいるとすこぶる機嫌がいい。母親と弟妹だけになると、『自分が、自分が』となり、気負ってしまうようだ。

だが北斗は、


「北斗、寂しい思いをさせてごめんな。でも今日は……」

「別に寂しくなんかない! パパがいなくても平気だよ。それに……はんざいしゃのパパなんかいらないっ!」


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