愛を教えて ―番外編―
そんな卓巳の顔色に、見る見るうちに万里子の表情も変わる。


「じゃ、じゃあ……今のこと、皆さんに見られていたんですね……」


卓巳の腕の中で万里子が呟いた。


「あ、いや、そんなつもりじゃなかったんだ」

「ふたりきりだっておっしゃったくせに」

「ご、ごめん。すまない……じゃ、続きは部屋に戻って」


そう言った瞬間、万里子の平手打ちが卓巳の左頬にヒットした。小気味好い音がスパにこだまする。


「卓巳さんの無神経! バカッ! もう大嫌い!」

「ま、万里子……。宗! お前もう少し遣りようがあるだろう!」


宗は両手を上げ知らん顔だ。
 


「万里子! 万里子待ってくれ、すまなかった。今度は必ず」


そんなことを叫びながら卓巳は万里子を追いかけ、更衣室に飛び込み――。

宗の耳に再び派手な音が聞こえた。


「やれやれ」


深いため息をつく社長秘書だった。





                    ~fin~


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