愛を教えて ―番外編―

(19)和解

七月初旬、まだ汗が噴き出すほどの気温じゃない。だが、鉄板の前に立つことがこれほど暑い……いや、熱いと改めて知った。


(いったい、いつまで働かせるつもりだ。昼飯も食わさない気か?)


卓巳が万里子を掴まえ文句を言おうとしたとき、焼きそばコーナーは完売と聞かされた。

冷たいビールテイスト飲料のロング缶を二本渡され「お疲れさま」と笑顔付きで言われたら……。黙って引き下がるほかない。ろくに話をする暇もなかったが、どうやら万里子の機嫌は直ったようだ。

ホッと息を吐く卓巳だった。


「ホラ、差し入れだ。飲めよ」


万里子から渡された缶を一本、藤臣に差し出す。

憎まれ口のひとつも叩くのかと思いきや、


「ああ、お疲れ」


藤臣は鉄板を磨いていた手を止め、壁を背にコンクリートの上に座り込んだ。長めの前髪をグリーンのバンダナで留めている。そのバンダナに描かれているイラストが、“メロンパンナちゃん”とわかる自分に卓巳は苦笑いだ。   


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