愛を教えて ―番外編―
「何が可笑しい?」

「いや……お疲れ」


卓巳はごまかしながら、プルトップを開け、ひと口含んだ。

喉の奥に流れ込む、苦い液体はかなり冷たくて心地よい。おそらく、手伝いに入った父親たちのために冷やしておいてくれたのだろう。

肉体労働の後の一杯というのは久しぶりで、アルコールが全く入ってないとはいえ、実に美味しかった。


「そうそう、子どもたちに話したことだが……ナイス・アシストだったな」


卓巳が思い出したように口にすると、藤臣は声を立てて笑った。


「ああ、お前が助けてくれた、ってヤツか? いいさ、そういうことにしておけば」


どうやら藤臣は全部わかっていて卓巳にゴールを譲ったらしい。
 

卓巳が瀬崎の会社に援助の手を差し伸べたのは事実。それにより、藤臣は東京に戻る足掛かりを残せた。

だが、卓巳には別の目論見があった。

瀬崎そのものを抱き込んでしまえば藤臣は二度と経営者として表舞台に戻って来られない。そして、その瀬崎をステップにして、アンフェアな美馬グループを日本経済界から排除するつもりでいた。
 

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