愛を教えて ―番外編―
(あの男は何を話したんだ? まさか……)
卓巳が藤臣を信じたのは早計だったか、と思い始めたとき、万里子が口を開いた。
『美馬さんは、あなたに敵わなかったから少し悪さをした、とおっしゃってました。多くの女子学生から声をかけられてもあなたは難攻不落だった、と。……だから、わたしに嘘は言ってない。わたしだけって、これからも思い続けていいですか?』
『ああ、もちろんだ。結婚前に話した……ほんの少し興味が惹かれたのと、身体の件で無茶をしてしまっただけなんだ』
どうやら万里子は、大学時代の卓巳と藤臣がひとりの女性をめぐって取りあったかのような誤解をしていたらしい。
卓巳にすればその女性と藤臣の関係より、彼が卓巳の失敗を大学内に広めたことのほうが問題だった。
藤臣は“未経験の卓巳の失敗”程度に軽く考え、笑い者にしてやろう、といった気分だったのだろう。
だが、あの時は医者に病名を宣告された直後で、傷口に塩を塗り込まれたようなダメージを受けていた。
そのことを卓巳が正直に話すと、
『そんな、美馬さんも酷いわ』
『ああ、その彼女とチャッカリそういう関係になって聞き出した、と言われたら余計に堪えてね。奴が結婚したときも、入籍直前まで他の女性と婚約していたんだ。でも……君の言うとおりだった。思えば、あの太一郎だって一八〇度変わったんだ。今の美馬なら……友だちになっても悪くないと思える』
万里子は嬉しそうに笑ってくれた。
卓巳が藤臣を信じたのは早計だったか、と思い始めたとき、万里子が口を開いた。
『美馬さんは、あなたに敵わなかったから少し悪さをした、とおっしゃってました。多くの女子学生から声をかけられてもあなたは難攻不落だった、と。……だから、わたしに嘘は言ってない。わたしだけって、これからも思い続けていいですか?』
『ああ、もちろんだ。結婚前に話した……ほんの少し興味が惹かれたのと、身体の件で無茶をしてしまっただけなんだ』
どうやら万里子は、大学時代の卓巳と藤臣がひとりの女性をめぐって取りあったかのような誤解をしていたらしい。
卓巳にすればその女性と藤臣の関係より、彼が卓巳の失敗を大学内に広めたことのほうが問題だった。
藤臣は“未経験の卓巳の失敗”程度に軽く考え、笑い者にしてやろう、といった気分だったのだろう。
だが、あの時は医者に病名を宣告された直後で、傷口に塩を塗り込まれたようなダメージを受けていた。
そのことを卓巳が正直に話すと、
『そんな、美馬さんも酷いわ』
『ああ、その彼女とチャッカリそういう関係になって聞き出した、と言われたら余計に堪えてね。奴が結婚したときも、入籍直前まで他の女性と婚約していたんだ。でも……君の言うとおりだった。思えば、あの太一郎だって一八〇度変わったんだ。今の美馬なら……友だちになっても悪くないと思える』
万里子は嬉しそうに笑ってくれた。