愛を教えて ―番外編―
【next generation 誓いのキス】
前編
「だって……みず色のドレスがきたいんだもん」
六歳の誕生日を翌日に控え、ひとり娘の愛実(まなみ)がドレスの色でごね始めた。
今日は万里子にとって、母親として大切な日だ。
娘の仕度はメイドに任せていたのだが、『用意されたドレスに着替えてくださらないのです』そんな報告を受けて駆けつけたのである。
「愛実さん、今日は大樹お兄様の大事な日でしょう? ドレスの色は昨日も話したはずよ」
万里子の言葉に愛実は黙ってうつむく。
「……だって……」
「花嫁さんがお色直しで着るドレスが淡いブルーだから、愛実さんは赤にしましょう。そうお約束したわよね?」
「……」
愛実はうつむいたまま鼻を啜る。
黙って泣くふりをするだけで、父親の卓巳をはじめ家族全員が言うとおりにしてしまうのだ。
五歳の娘もそのことはよくわかっていて、本当なら万里子以外が来てくれることを願ったのだろう。
「明日の誕生日パーティは愛実さんが主役だから、好きな色のドレスを着たらいいのよ。でも今日はダメ。泣いても我がままは聞きません」
「じゃあ、けっこんしきなんか出ない」
「本当にそれでいいの? お兄様が悲しむでしょうね……大好きな妹が、自分の結婚を喜んでくれないんだと思ったら」
「そんなことないもんっ!」
「じゃあ赤いドレスに着替えなさい」
万里子にピシリと叱られ、愛実は渋々「……はい、お母さま」そう答えたのだった。
六歳の誕生日を翌日に控え、ひとり娘の愛実(まなみ)がドレスの色でごね始めた。
今日は万里子にとって、母親として大切な日だ。
娘の仕度はメイドに任せていたのだが、『用意されたドレスに着替えてくださらないのです』そんな報告を受けて駆けつけたのである。
「愛実さん、今日は大樹お兄様の大事な日でしょう? ドレスの色は昨日も話したはずよ」
万里子の言葉に愛実は黙ってうつむく。
「……だって……」
「花嫁さんがお色直しで着るドレスが淡いブルーだから、愛実さんは赤にしましょう。そうお約束したわよね?」
「……」
愛実はうつむいたまま鼻を啜る。
黙って泣くふりをするだけで、父親の卓巳をはじめ家族全員が言うとおりにしてしまうのだ。
五歳の娘もそのことはよくわかっていて、本当なら万里子以外が来てくれることを願ったのだろう。
「明日の誕生日パーティは愛実さんが主役だから、好きな色のドレスを着たらいいのよ。でも今日はダメ。泣いても我がままは聞きません」
「じゃあ、けっこんしきなんか出ない」
「本当にそれでいいの? お兄様が悲しむでしょうね……大好きな妹が、自分の結婚を喜んでくれないんだと思ったら」
「そんなことないもんっ!」
「じゃあ赤いドレスに着替えなさい」
万里子にピシリと叱られ、愛実は渋々「……はい、お母さま」そう答えたのだった。