愛を教えて ―番外編―
十二月二十四日、次男の大樹が花嫁を迎える。

と同時に、大樹は藤原の家を出て、万里子の実家である千早家に入ることになった。まだ大学二年、年が明けてすぐに二十歳の誕生日という若さ。

大樹は大学に通いながら、千早物産の社長秘書として仕事も覚えていくという。


『いきなり相談されたときは驚いたけど……。卓巳さんの息子なだけあって頭はいいよ。経営センスもあるし、大学を卒業したらすぐに重役が務まると思うから。これで千早会長も安心だな』


そう言って大樹の教育を引き受けてくれたのは、現社長の太一郎だった。


会長である万里子の父、隆太郎は七十代後半。三年ほど前に軽い狭心症で入院したこともある。今は形だけの名誉会長に退き、自宅で気ままな隠居生活を送っていた。

卓巳と万里子は隆太郎の身を案じ、藤原邸で同居を提案したのだが……。

『私の家はここだ』と言って譲らない。


隆太郎を実の父のように慕う太一郎が、千早邸に入り同居しようという話になった矢先、太一郎の母、尚子が倒れてその話はなくなった。

千早の会社に関しては彼に頼りっぱなしだ。大樹の面倒まで任せるのは心苦しいが、それで大樹が一人前になってくれるなら、太一郎に任せるよりほかない。
 


ベルベッドの赤いドレスは裾だけパウダースノーを散らしたように白くなっている。ウエストに付けられた緑のリボンといい、クリスマスを意識したデザインだ。

愛実はトレーンアベラーとして花嫁のトレーンを持つ役目だった。


そして愛実と同じデザインのドレスを着て、ブライズメイドを務めるのが……


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