愛を教えて ―番外編―
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「おまえの息子らしからぬ早業だな」
簡易式チャペルの鐘の音が冬空に響き渡ったとき、卓巳の背後から聞きなれた声がした。
美馬グループのトップに立つ美馬藤臣だ。ここ十年でふたりの関係は変わった。仕事上のライバル関係はだいぶ解消され、お互いに持っていた偏見も今はほとんどない。
「ああ……おまえも充分気をつけるんだな」
「うちはまだまだガキだよ」
「……そう思ってるのは親だけだ」
「なるほど、今のおまえの心境か」
失笑を続ける美馬に卓巳は、
「いや事実だ。おまえの場合、自分が二十歳のころを思い出してみたほうがいいんじゃないか?」
美馬は一瞬で口を噤む。
両家の長男次男は奇しくも年齢が重なっている。しかも、幼稚園から大学まで同じコースという幼なじみだ。
この四人に一条弁護士宅の次男・真と、ここにはいないが、太一郎の娘・美月が長男たちと同じ歳。そして、宗家の双子が次男たちと同じ歳で加わり……この藤原邸の離れで仲よく遊んでいたのがつい昨日のことのようだ。
「おまえの息子らしからぬ早業だな」
簡易式チャペルの鐘の音が冬空に響き渡ったとき、卓巳の背後から聞きなれた声がした。
美馬グループのトップに立つ美馬藤臣だ。ここ十年でふたりの関係は変わった。仕事上のライバル関係はだいぶ解消され、お互いに持っていた偏見も今はほとんどない。
「ああ……おまえも充分気をつけるんだな」
「うちはまだまだガキだよ」
「……そう思ってるのは親だけだ」
「なるほど、今のおまえの心境か」
失笑を続ける美馬に卓巳は、
「いや事実だ。おまえの場合、自分が二十歳のころを思い出してみたほうがいいんじゃないか?」
美馬は一瞬で口を噤む。
両家の長男次男は奇しくも年齢が重なっている。しかも、幼稚園から大学まで同じコースという幼なじみだ。
この四人に一条弁護士宅の次男・真と、ここにはいないが、太一郎の娘・美月が長男たちと同じ歳。そして、宗家の双子が次男たちと同じ歳で加わり……この藤原邸の離れで仲よく遊んでいたのがつい昨日のことのようだ。