愛を教えて ―番外編―
「万里子を抱けるようになったんだ。文句は言いたくないけどな……頼むから、中学生みたいに反応するのは止めてくれ。せめて、歳相応に……。いや、まあ、ダメよりマシか」


相棒の機嫌を損ねて、肝心の夜に沈黙されては洒落にならない。

卓巳は独り、桜の見える露天風呂に浸かり、そんなことを呟いていた。


「わかった。悪かった。息を吹き返してくれただけでも感謝してる。おかげで息子が持てたんだし……。次は頑張って娘を頼むぞ」


ひらひら舞う桜の花びらが数枚、湯船に浮かんでいる。

淡く色づいた桜は、卓巳を見つめる万里子の頬の色と同じだ。傾き始めた陽射しを受けて、桜の木に金の粉が降り注いでいた。


「……全部貸し切りにして、万里子と一緒に見たかったな」


ポツリと卓巳がこぼしたときだった。


「ええ、本当に。とっても綺麗ですね」


背後で万里子が答えたのである。


「どうしたんだ? 今は男湯の時間だろう!?」


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