愛を教えて ―番外編―
湯船の中で万里子を膝に抱き、卓巳は正直に話した。 

すると、万里子の手が卓巳の首に回り、


「もし、そんなことをされたら……わたし、結人を連れて実家に帰りますからね」


そう言って唇を尖らせる。

卓巳は苦笑いを浮かべて、万里子の唇にチュッと口づけた。


「わかってるよ、奥さん。胃液を吐くような経験は二度とごめんだ。僕は死ぬまで君だけでいい」


露天風呂よりぬるめのお湯が心地よい。少し冷えた卓巳の肌を、なめるように温めてくれる。

キスが深まるごとに、万里子の乳房が卓巳の胸に押し当てられた。その感触がむずむずしてこそばゆい。

卓巳は両手で万里子の柔らかな背中をなぞった。肩のあたりから背筋を辿り、丸みのあるヒップまでをゆっくりと撫でる。

熱い吐息が万里子の唇からこぼれ、卓巳はそれすくい取るように何度も唇を重ね合った。

しだいに、卓巳の指は万里子の太腿の内側に滑り込む。数回往復させると、そこはすぐに滑らかな潤いに満たされていく。


「万里子……少し腰を浮かせて、そのまま下ろせるかい?」


それはふたりにとって初めての体位だった。


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