愛を教えて ―番外編―
「いえ……あの、この方……本当に高校生さんなのでしょうか? 私より年上に見えるんですけど」


予想外にも、冷静な万里子の声が聞こえる。

言われてみれば、女子高生というより二十代後半、下手をすれば三十代にも見えるだろう。


「セーラー服に見えるが……こういったデザインの洋服とか? いや、ああ、そう言えば、聞いたことがある」


撮影では、実際に高校生は使うわけにはいかないので、成人女性が制服を着て高校生を演じる、と。

それを聞いたとき、どうして女子高生なんだ? と卓巳は思ったが、世の中には女子高生とセックスしたい成人男性が多いらしい。

有名女子高の制服に萌えるのだ、という。

そういった男たちをターゲット――いわば金づるにして、女子高生・中学生が援助交際に走るのだから驚きだ。


(まったく、女というのは年齢に関係なく、金のためならなんでもする生き物だな)


卓巳の中にふたたび女性不信の芽が出かけたが、


「制服に……ですか? 事件になっているものは新聞でも目にしますが。立派な立場や年齢のかたもいらっしゃるのに。欲望を満たすためなら、男の人って際限なく恥知らずになれる生き物なんですね」


万里子の言葉に卓巳のほうが焦った。


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