愛を教えて ―番外編―
【プールサイドで愛を教えて】
そこは藤原グループの所有するホテル……卓巳が結婚前に、毎夜、万里子を連れ込んだホテルである。
“連れ込んだ”といえば聞こえは悪いが、悪く聞こえるようにしたのは卓巳自身だ。そのときも、ホテルの従業員の中で『あの藤原社長が』と、かなり噂になった。
しかし今回、卓巳はそれを遙かに上回ることをやってくれたのである。
「プールを、ですか?」
秘書の宗は絶句した。
「そうだ。それから、リストの物を全部用意しておいてくれ」
「いえ、でも……平日の昼間でも少し難しいかと。スクールもありますし、イベントで貸し切りにするケースはありますが、最低でも三ヶ月前には申請しませんと。社長、一般のプールとは違い、元々人も少なめです。とくに貸し切りにせずとも」
「ダメだ。貸し切りだ。何も客を追い出せとは言ってない。サウナでも営業は夜十時までだろう。そのあとでいい。プールサイドに人は不要だ。今週中に開けるように言っておけ」
宗は諦めながら、リストを持ち上げる。同時に、彼は首をひねった。
「あの、社長……これは? いったい何をされるつもりなんでしょうか?」
「宗――私は必要な物を購入するのに、いつからお前の許可が必要になったんだ?」
「失礼いたしました。すぐに用意させます」
(また、何を考え出したことやら……かすみ草の二の舞にならなきゃいいが)
リストを眺めながら、ため息をつく宗だった。
“連れ込んだ”といえば聞こえは悪いが、悪く聞こえるようにしたのは卓巳自身だ。そのときも、ホテルの従業員の中で『あの藤原社長が』と、かなり噂になった。
しかし今回、卓巳はそれを遙かに上回ることをやってくれたのである。
「プールを、ですか?」
秘書の宗は絶句した。
「そうだ。それから、リストの物を全部用意しておいてくれ」
「いえ、でも……平日の昼間でも少し難しいかと。スクールもありますし、イベントで貸し切りにするケースはありますが、最低でも三ヶ月前には申請しませんと。社長、一般のプールとは違い、元々人も少なめです。とくに貸し切りにせずとも」
「ダメだ。貸し切りだ。何も客を追い出せとは言ってない。サウナでも営業は夜十時までだろう。そのあとでいい。プールサイドに人は不要だ。今週中に開けるように言っておけ」
宗は諦めながら、リストを持ち上げる。同時に、彼は首をひねった。
「あの、社長……これは? いったい何をされるつもりなんでしょうか?」
「宗――私は必要な物を購入するのに、いつからお前の許可が必要になったんだ?」
「失礼いたしました。すぐに用意させます」
(また、何を考え出したことやら……かすみ草の二の舞にならなきゃいいが)
リストを眺めながら、ため息をつく宗だった。