愛を教えて ―番外編―
【ラブ・ストーム ―余波―】

前編

追い出されたふたりは中の様子を心配そうに伺う。


『やっぱりドクターを呼びましょう! 奥様に何かあってからでは手遅れだわ』

『いや、でも社長のことです。ドクターを呼んだところでおとなしく従うかどうか……』


ジェイクは卓巳のことを崇拝していた。

つい先日、ジェームズ・サエキを追い詰め、サー・スティーブンの居場所を聞き出した手腕の見事だったこと。

頭脳明晰で度胸も据わっており、まさにジェイクが思い描く理想の男であった。


その卓巳がなんとかすると言っているのだ。卓巳のやることに間違いはないだろう。


『ソフィ、社長は奥様を心から愛しておられます。ここは、お任せしましょう』

『それは……』


ソフィは渋々頷き……ドアの外に立ったまま、ふたりは中から呼ばれるのを待つことにしたのだった。



室内は割とすぐ静かになり、ふたりの声が聞こえる。

話し合えるようになったのなら良かった、とジェイクはホッと息をつく。

ところが――。

一時間もせずに中の様子が変わってきた。


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