虹色マテリアル
「あ、落ちちゃう」

日差しは寂しいほどに微かな存在を匂わせるだけ。

まだダウンコートを着る……なんてそんな気の早い人は見掛けないけど、半袖半ズボンで公園を駆け回る小学生も見掛けなくなった、そんな季節。


高校二年生、進路や人間関係など心にもやもやと気持ちの悪いひっかかりを感じながら過ごす毎日。

一見なんでもないような何気無い溜め息でも、たくさんの悩みの種を抱えながらのそれは、案外それなりの重みがあるものだ。



「……あ、やっぱり。最後の一つだったのにな」


二ー三と組分けられたこの教室は、年相応の恋に関する噂話から、隣のクラスにいる誰かの影口などいつだって様々な話題の言葉に埋もれている。


そんな教室の窓際の席。

可愛いキャラクターのついたイヤホンから最近流行りの曲を流し込みながら、浅川由良は、一人ぼんやりと何もないような外の景色を眺める。


秋の終わり独特の冷たい風に急かされるように落ちていく木の葉を、毎朝自分の席に座りながらみつめるのが彼女の日課なのだ。


そして、今日一つの木が全ての葉と別れを終え、目まぐるしい季節の変化を伝えていた。


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