愛を教えて ―背徳の秘書―
朝美はその辺りを確認するため、有休を取り消し、会社に出勤することにした。
そして今朝……駅の階段で、後ろから誰かに引っ張られた。
いや、自分が倒れそうになり、偶然、朝美を掴んだのかもしれない。あるいは、被害者は誰でもいい愉快犯という可能性もある。
ただ、朝美が落ちる寸前、目にしたのは……彼女のショルダーバッグを掴む、女の指であった。
コンコン――扉がノックされ、宗の寄越した男性社員が大きな箱を抱えて入ってくる。
「あら? どうかなさったの?」
「入院手続きに行ったら、受付に届いてたんです。F総合企画の中澤朝美さんに、と。うちの女子社員が持って来たとか」
それは箱入りの花束のようだ。
普通ギフト用の箱は、花束が見えるように窓がついているものだが……小窓には内側から、銀色のセロファンが貼られていた。そのため、なんの花束か全く見えない。
不審に思いつつ、朝美は箱を開ける。
「なんなのこれ!」
そこに入っていたのは……黒いリボンで結えられた、白い大菊の花束。
中央に添えられたメッセージカードには『故・中澤朝美様へ』。
怒りのあまり、朝美は箱を床に叩きつける。
だが、さすがの彼女も青褪めた表情を打ち消すことはできなかった。
そして今朝……駅の階段で、後ろから誰かに引っ張られた。
いや、自分が倒れそうになり、偶然、朝美を掴んだのかもしれない。あるいは、被害者は誰でもいい愉快犯という可能性もある。
ただ、朝美が落ちる寸前、目にしたのは……彼女のショルダーバッグを掴む、女の指であった。
コンコン――扉がノックされ、宗の寄越した男性社員が大きな箱を抱えて入ってくる。
「あら? どうかなさったの?」
「入院手続きに行ったら、受付に届いてたんです。F総合企画の中澤朝美さんに、と。うちの女子社員が持って来たとか」
それは箱入りの花束のようだ。
普通ギフト用の箱は、花束が見えるように窓がついているものだが……小窓には内側から、銀色のセロファンが貼られていた。そのため、なんの花束か全く見えない。
不審に思いつつ、朝美は箱を開ける。
「なんなのこれ!」
そこに入っていたのは……黒いリボンで結えられた、白い大菊の花束。
中央に添えられたメッセージカードには『故・中澤朝美様へ』。
怒りのあまり、朝美は箱を床に叩きつける。
だが、さすがの彼女も青褪めた表情を打ち消すことはできなかった。