愛を教えて ―背徳の秘書―
(19)嘘の代償
「社長! 今のは……どういうことでしょうか?」


卓巳は同室の女性に気を配り、朝美を個室に移動させる。その上で、京佳が警察に、参考人として話を聞かれていることを伝えた。


「あのメイド……いえ、和田さんを線路にですって?」


朝美をはじめ、社員たちの顔色が変わる。

どう考えても嫉妬のあまり……では許されない行為だ。事実なら、殺人未遂で送検されるかもしれない。


「……その方は、亡くなったんですか?」


薫は瞳に影を宿し、声は震えていた。


「イヤ、無事だ。だが、警察で事情を話すより先に、宗と雪音くんにはこの病院に回るよう伝えた。どうやら、雪音くんが“本当に”足を挫いたらしいからな」


一ヶ所を強めて卓巳は発言する。


< 111 / 169 >

この作品をシェア

pagetop