愛を教えて ―背徳の秘書―
「い、いえ。本当に一瞬、もの凄く痛みましたの。……なんだったのかしら?」

「ああ、それと、君の言っていた“男と女の事情”だが……。階段から落ちたりしては大変じゃないか? 命に関わってはと、医師に注意を促しておいた。間もなく“不測の事態”とやらもハッキリするだろう」


返事のなくなった朝美に、卓巳は最後通牒を突きつけた。


「今回の事件は警察が介入した。場合によっては、社員から逮捕者を出すことになるだろう。その場合、要因となった人間たちの処罰もあり得る。その対象に誰が相応しいか、君の意見を聞きたい」


朝美は唾を飲み込むと、ようよう口を開いた。


「申し訳ありませんが……私にはなんの関係もありませんので」

「その怪我は?」

「誤解があったのかもしれませんわね」


頬を引きつらせながら微笑む朝美に、卓巳もニヤリと笑った。


「結構。個室は私からの見舞いだ。完治したら戻ってくれ。第一秘書の席は空けておこう」


朝美は仕事を選び、宗からは全面撤退を余儀なくされたのだった。


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