愛を教えて ―背徳の秘書―
「……」


そのとき、宗はひとつのことに気づいた。


――どうして彼女は、雪音がコンビニで傘を買ったことを知っていたのだろう?


突然芽生えた不安に、宗は雪音の傍にいたくなった。

雪音だけは……これ以上泣かせたくはない。幸せにできないまでも、不幸にはしたくない。


宗はゆっくりとソファから立ち上がり、薫に背を向けた。


「社長、遅いな。山南くんの件でトラブルがあったのかもしれない。確認してくるから、君はここで待って――」



薫もゆっくりと立ち上がりながら、大きなトートバッグから何かを取り出した。それは、蛍光灯に反射して銀色に光る。

ドアに向かう宗の背後に追いついたとき――

銀色の光は音もなく、宗の脇腹に吸い込まれていった。


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