愛を教えて ―背徳の秘書―
「何が起こってるのかよくわからないんだけれど……ひとりは駄目よ。事情聴取も宗さんと一緒に行くべきだわ」


治療を終えた雪音は、廊下で待つ警官と先に警察署に行く、と万里子に告げた。


だが、万里子は絶対に譲らない。頑固なのは卓巳以上である。


「わかりました。宗さんを呼んで来ます」


気分は乗らないが、藤原邸に勤める以上、これからも宗とは顔を合わすことになる。


あの男のことだ、別のメイドに手を出して、“離れ”でよろしくやるかもしれない。

宗の病気はきっと死んでも治らない――それを思うと、彼女は唇を噛み締めた。



特別室の空き室があるのは最上階からひとつ下だ。最上階にあるのは一番上等な部屋がひとつ、卓巳の祖母、皐月の病室だった。


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