愛を教えて ―背徳の秘書―
「不幸中の幸いは、お前が彼女たちに手を出してなかったことだな。どちらかと、あるいは両方と関係していたら……お前は今頃、火ダルマだ」
「はい。おっしゃるとおりです」
ベッドに横たわったまま、宗は感情の浮かばない声で答えた。
宗の傷は全治二ヶ月、退院まで一ヶ月程度。
内臓は無事だったが、血管を傷つけていたため、危うく失血死するところだった。雪音を守ろうと刃物を抜かせなかったのが、結果的に彼自身も救われた。
その雪音だが……。
「ねえ、宗さん。鈴本薫さんが警察に連れて行かれるとき、叫んでいたわ。宗さんは最後まで嘘をついたって。なんとも思ってない、そう言いながら、雪音さんに逃げろって言ったんでしょう?」
「……」
「別れたくない、もう一度やり直そう。どうして、そう言わないの?」
意識が戻ったとき、雪音は宗の傍にいた。
彼女にしては珍しく素直で、優しく……甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
このまま何もなかったように、なし崩しに雪音との結婚に持ち込もうか、そんな考えも浮かんだ。
だが、それではこれまでと同じである。
現実から目を背け、楽な方に楽な方に流れて……。
「はい。おっしゃるとおりです」
ベッドに横たわったまま、宗は感情の浮かばない声で答えた。
宗の傷は全治二ヶ月、退院まで一ヶ月程度。
内臓は無事だったが、血管を傷つけていたため、危うく失血死するところだった。雪音を守ろうと刃物を抜かせなかったのが、結果的に彼自身も救われた。
その雪音だが……。
「ねえ、宗さん。鈴本薫さんが警察に連れて行かれるとき、叫んでいたわ。宗さんは最後まで嘘をついたって。なんとも思ってない、そう言いながら、雪音さんに逃げろって言ったんでしょう?」
「……」
「別れたくない、もう一度やり直そう。どうして、そう言わないの?」
意識が戻ったとき、雪音は宗の傍にいた。
彼女にしては珍しく素直で、優しく……甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
このまま何もなかったように、なし崩しに雪音との結婚に持ち込もうか、そんな考えも浮かんだ。
だが、それではこれまでと同じである。
現実から目を背け、楽な方に楽な方に流れて……。