愛を教えて ―背徳の秘書―
「今度こそ、その優しさを誠実に受け止めてくれる男を選んだほうがいい。もう二度と、俺のような男に引っかかったらダメだよ……雪音くん」 


その瞬間、紙袋が飛んできた。

右腕を上げ、避けようとした拍子に傷口が引き攣り、宗の顔が歪む。


「怪我人なんだからちょっとは手加減……」


雪音は泣いていた。

宗がストレッチャーで運ばれるとき、『死なないで』とポロポロ涙をこぼした。あのときと同じ顔で。

胸が引き絞られるように痛み、宗は降参したのだ。


「俺は、君を泣かせてばかりだ」

「ホントよ。バカ……もう、最低。男なんか奪うばっかりじゃない! きっと世の中にロクな男が残ってないんだわ。嫌い、嫌い、嫌い、もう、大っきらい!」


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