愛を教えて ―背徳の秘書―
【番外編】

―正しい露天風呂の使い方―

この一年は本当に色んなことがあった。

大晦日、道後温泉の岩露天風呂に浸かり、雪音はしみじみ考えていた。


年の始めは、会社がどうなるのかすらわからず。つくづく、藤原グループは卓巳の双肩に掛かっているのだ、と実感した。

直後に、太一郎は別人のようになって藤原家を出て行った。そして、夏に戻って来たときは、お腹の大きな奥さんと一緒だったのだ。人間、変われば変わるものである。

会長の皐月が心筋梗塞で入院したときも大変だった。

助かってホッとした矢先に、今度は万里子の妊娠が発覚。おめでたいはずが、これも大騒ぎになってしまった。


そして――宗の事件である。

別に宗自身が事件を起こした訳ではない。彼も殺されそうになった被害者だ。しかし、これまでの女性に対する不実さで、彼は裁かれた。


宗は東京を離れることになり……。

十月から北海道で働き始めてやっと三ヶ月。二年の予定というから、あと一年と九ヶ月も残っている。

万里子には平気だと言ったが、あの宗のことだ。こんなに離れていたら、またどんな女に引っ掛かるかわからない。

雪音は絶えず不安と戦っていた。


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