愛を教えて ―背徳の秘書―
「噂を聞いたんですけど……社長秘書の宗さんと結婚されるんですか?」
ふいにそんな言葉で呼び止められ、中澤朝美(なかざわあさみ)は驚いて目を見開いた。
今日の朝美はオフホワイトのスーツ姿だ。スカートは緩いマーメイドラインで膝より少し下である。髪も普段よりふんわりと纏め……季節が春なので、少しフェミニンな印象にしていた。
「まあ、何かしら。誰からお聞きになったの?」
朝美はお得意のアルカイックスマイルで否定とも肯定とも言える返事をする。
声をかけたのは、二十代半ばの女性社員ふたり。さすがの朝美も総務の一般社員までは、顔も名前も記憶の外だった。
「社内の噂です。私たちは社員食堂で聞いたんですけど……」
朝美はそれとなくふたりの女性を眺める。
声をかけた方ではなく、隣に立っている女性の方が、どうやら宗に憧れ以上の想いを抱いているようだ。
「その件は……私の口からはお答えできないわ。急いでるの、ごめんなさいね」
うまい言葉で逃げると、踵を返し、最上階直通のエレベーターに乗り込んだ。
ふいにそんな言葉で呼び止められ、中澤朝美(なかざわあさみ)は驚いて目を見開いた。
今日の朝美はオフホワイトのスーツ姿だ。スカートは緩いマーメイドラインで膝より少し下である。髪も普段よりふんわりと纏め……季節が春なので、少しフェミニンな印象にしていた。
「まあ、何かしら。誰からお聞きになったの?」
朝美はお得意のアルカイックスマイルで否定とも肯定とも言える返事をする。
声をかけたのは、二十代半ばの女性社員ふたり。さすがの朝美も総務の一般社員までは、顔も名前も記憶の外だった。
「社内の噂です。私たちは社員食堂で聞いたんですけど……」
朝美はそれとなくふたりの女性を眺める。
声をかけた方ではなく、隣に立っている女性の方が、どうやら宗に憧れ以上の想いを抱いているようだ。
「その件は……私の口からはお答えできないわ。急いでるの、ごめんなさいね」
うまい言葉で逃げると、踵を返し、最上階直通のエレベーターに乗り込んだ。