愛を教えて ―背徳の秘書―
血相を変える雪音の口に軽くキスする。

この辺りの素早さは……まさか、クリスマスも仕事と称して新しい女と会ってたんじゃ、と疑いたくなってしまう。


「ねぇ……ほんっとーに、私と結婚する気なわけ?」

「今さらなんだよ。お前の親にも挨拶に行ったし、指輪も渡しただろ?」


松山に来る直前、雪音は宗を連れて数年ぶりに父を訪ねた。


父は雪音から結婚の話を聞くなり、迷惑そうに顔を顰める。

そしてあろうことか、『十万が精一杯だ。今は不況で……』と金の話を始めたのだ。

ところが、宗の肩書きを聞くや否や、手の平を返したように『結婚式は恥ずかしくないだけのことをしよう』などと言い始め……。挙げ句の果てに、式には藤原グループの人たちも来るんだろうな、と。


雪音はとうとう切れてしまい『式は挙げない!』と宣言したのだった。


「なあ雪音、本当に結婚式しないつもりか?」

「再来年までにお金が溜まったらするけど……」

「俺が出すよ」

「入院やら引越しやら、色んなお金が掛かって、それに給料だってガタ落ちなんでしょ?」


雪音にスッパリと言われ、宗は天を仰いでいる。


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