愛を教えて ―背徳の秘書―
「でもひどい雨よ。朝にはやむわ。早めに出て着替えに帰ればいいじゃない」

「そういう問題じゃなくて……」


ズボンに足を突っ込む彼の後ろから、全裸の女が抱きつく。

白い肌は闇の中では輪郭がぼやけて見える。それが余計に宗の心を惑わせた。

普段のかっちりしたスーツからは想像できないほど豊かな胸だ。かつて藤原邸に勤めていたメイドの永瀬あずさといい勝負かもしれない。

硬くなった胸の先端を背中に感じながら、そんな馬鹿げた考えを巡らせる。


「お願い! 誰と結婚してもいいわ。だから、このまま私とも続けて……お願い、ユキ」

「だから結婚とかじゃなくて、さ。こういうのをやめようと思ってるんだ。なあ、香織……いや、志賀くん。これで最後って言っただろう? 頼むから、円満に別れてくれよ」

「嘘よ! 逆玉に乗って結婚する気なんでしょう? 社長にどこかのお嬢様を紹介されたって噂は本当だったのね。だから女性関係を清算してるんだわ。あんまりよ……五年も前から付き合ってるのに」

「待て待て、それじゃ俺が極悪人に聞こえるだろう? 三年前に他の男と結婚するって一度は別れたじゃないか。離婚して、今度はセフレが欲しいって言うから」


宗が言った途端、香織は声を上げて泣き始める。


(……ったく、なんでこうなるんだ)


内も外も、雨は容赦なく降り注いでいた。


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